Dropboxにファイルを格納してメンバーで共有したり、freeeで確定申告したり、プライベートでもAmazonPrimeで映画をみたり、AppleMusicで音楽を聴いたり。私たちの身の回りにもSaaSのビジネスが溢れています。
今回は、SaaSとは何か?を改めて紹介し、SaaSビジネスの営業に求められるスキルを考えていきましょう。
この記事の内容
SaaSビジネスモデルとは?
SaaS(Software as a Service)ビジネスモデルとは、必要な機能をクラウド上で利用できるようにしたソフトウェアの提供を行うビジネスのことを指します。
クラウドが一般的になる以前はソフトウェアを購入してユーザ側でコンピュータにインストールして使っていました。
SaaSではソフトウェア自体はサービスの提供側のサーバーで起動させ、ユーザーはサービス毎に設定されている利用料を支払うことで、インターネット経由の必要なサービスを受けることができます。
特に近年ではAmazon PrimeやApple Music、Huluなど月額課金サービス(サブスクリプションモデル)のSaaS型のサービスが好調です。
海外と比較するとまだまだ少ないですが、日本国内においてもfreeeやマネーツリーなどの月額課金サービスも順調に推移しているようです。
サブスクリプションビジネスについては、こちらの記事内で詳しく解説しています。
関連記事:サブスクリプションビジネスとは?成功のポイントや種類を徹底解説
SaaSビジネスモデルの特徴
なぜ、SaaS型ビジネスモデルが好調なのでしょうか。その特徴を見ていきたいと思います。
- サービスがインターネット経由で提供されるため物理的なソフトウェアが不要
- サービス導入の初期コストが安い
- アップデートに素早く対応できる
- ユーザが増えると売上が積みあがる
- ユーザに満足してもらえなければ、解約される可能性がある
大きくこのような特徴があります。
言葉を悪く言ってしまうと、これまで「売り切り」の商品であればユーザとの接点は売って商品を提供した時点で終了します。
しかし、SaaS型のビジネスモデルは売った後の顧客の満足度が重要です。もし、顧客がそのサービスに満足しなければ初月で解約されてしまう可能性があるからです。
関連記事:顧客満足度(CS)とは?向上のポイント・ツール7選と具体事例
SaaS営業とは?
SaaSビジネスの普及とともに営業担当者も増えており、他業界と比較してもリモートワークの定着率が高いため、子育てと仕事を両立しやすいといった声が多く挙がっています。SaaSは特定のプロダクトに対し、毎月決まった金額を支払う月額課金型のビジネスです。
ここでは、SaaSプロダクトの営業が、その他の営業とどう違うのかを紹介します。
SaaS以外の営業との違い
一般的な営業シーンでは、一度の取引で大きな金額が動きます。 特にBtoB領域のビジネスでは、動く金額は顕著に大きくなるわけです。
SaaSビジネスでは、成約後のフォローアップやサポートが特に重要であり、その体制や品質が競争力となります。
なぜなら、SaaSビジネスの場合、成約したお客様がいかに長くプロダクトを使い続けるのかが重要だからです。
SaaSプロダクトが導入されても、結果的に使いこなすことができなければ、遅かれ早かれ解約されてしまうでしょう。
ですので、SaaSの営業は成約後に適切なコミュニケーションを定期的に実施し、お客様に満足してもらうような工夫や仕組みが必要になってきます。
SIer営業との違い
SaaSはSIerと混同または比較されるケースもあります。
SIerはSystem Integrator(システムインテグレーター)の略であり、お客様の要望に応じてプロダクトの設計・運用、コンサルティングに至るまで、様々な業務を請け負います。
SaaS営業と同様に成約後のフォローも重要ですが、SIerの場合はそもそも、お客様の経営・事業課題をITを使って解決するために、様々な価値提供を行なうことがメインです。
SIerには大きく分けて「アカウント営業」と「ソリューション営業」がありますが、アカウント営業は特定の企業に対して自社内のサービスをカスタマイズしながら提供し、課題解決を目指すスタイルです。
一方、ソリューション営業は、自社サービスをソリューションとして多くの企業へ提案していくスタイルとなります。
SaaSビジネスの仕事内容
SaaSビジネスの仕事内容は、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4つに大別できます。各職種の担当者が異なるのが一般的です。
以下にそれぞれの仕事内容を詳しく解説します。
マーケティング
マーケティングは、顧客に向けた情報発信や広告活動を担当します。ターゲット層の特定や競合分析、プロモーション戦略の立案などが主な業務です。
また、近年のビジネスのトレンドであるDX(デジタルトランスフォーメーション)はマーケティング領域にも影響を与えており、マーケティングDXという概念が登場しています。DX化されたマーケティングの進め方や企業事例、成功のポイントについては、以下の関連記事を参考にしてください。
関連記事:マーケティングDXとは?DXの進め方と企業事例・成功のポイントを解説
インサイドセールス
インサイドセールスは、オフィス内で電話やメールなどを通じて顧客とコミュニケーションを取りながら製品やサービスの提案を行います。
リードの発掘やデモの実施、契約獲得に向けた交渉が主な仕事です。
関連記事:インサイドセールスとは?メリット・組織化・ツールを解説
フィールドセールス
フィールドセールスは、顧客のオフィスや会議室などに訪問し、直接対面で商談を行います。顧客のニーズをヒアリングし、適切な提案や価格交渉、契約締結などを行います。
関連記事:インサイドセールスとフィールドセールスの違いとは?役割と分業化・連携のポイントを解説
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは、既存顧客との関係構築やサポートを担当します。顧客満足度の向上やリピートセールスの促進、問題解決やトラブルシューティングなどが主な業務です。
関連記事:カスタマーサクセスとは?具体的な業務や事例・おすすめツールを紹介
SaaSビジネスモデルで重要な用語とルール
通常のパッケージ商品のような売り切り方サービスとSaaS型ビジネスではユーザとの接点が違う、という説明をしました。
それに伴い営業のスタイルも大きく異なってきます。よく使われる用語とルールを見ていきたいと思います。
まず営業が知っておきたい用語をいくつかご紹介します。
- MRR:1ヵ月の経常収益
- ARR:年間の経常利益
- LTV:顧客生涯価値
- CAC:1顧客の獲得にかかる費用
- Churn Rate:解約率
- 40%ルール:ARR(MRR)の成長率+営業利益率
MRR(Monthly Recurring Revenue)
MRRとは1ヶ月の定額課金による収益のことです。
SaaSビジネスモデルでは、顧客が定期的にサービスを利用することにより、毎月安定した収益を得ることができます。
MRRは企業の安定性や成長性を評価する際に重要な指標となります。
<MRRの計算式>
【MRR= 1ユーザーあたりの月間平均収益× 該当月の総ユーザー数】
ARR(Annual Recurring Revenue)
ARRとは年間定額型収益モデルのことをさします。
従来Adobe社のソフトは高額でとても素人が手を出せる値段ではありませんでした。
しかし、Photoshopなど現在では年間定額プランで契約すれば低コストでプロが使っている画像編集ソフトを使うことができます。
<ARRの計算式>
【ARR= 月間の経常収益(MRR)× 12ヵ月】
LTV(Life Time Value)
LTVとは顧客の生涯価値のことです。
先述したように売り切り方のサービスや商品であれば、売った時点で顧客との接点が切れてしまいます。
しかし、サブスクリプション型のビジネスモデルでは顧客と継続的にその関係性を強化していかなければ解約に繋がってしまうわけです。
サービスを提供したあとも顧客満足を高め続ける努力をする必要があります。
LTVについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:LTV(ライフタイムバリュー)とは?意味と計算方法・LTV向上に有効な営業戦略
CAC(Customer Acquisition Cost)
CACとは顧客を1人獲得するのに必要なコストのことです。
導入コストやマーケティング費用、さらには営業のコスト全てを合わせた顧客獲得コストのことを指します。
CACについては、こちらの記事内で詳しく解説しています。
関連記事:CAC(顧客獲得コスト)とは?CPAとの違いや計算方法・削減方法を解説
Churn Rate(チャーンレート)
Churnとは解約のことです。
なお、Churn Rate(解約率)は、ある特定の期間内に有料ユーザーが退会した割合を示す指標です。
売って収益化するビジネスモデルではないため、解約率が高まるとサービスとして成り立たなくなります。
解約率が高くなるとCACにかけられる費用も減少するため、営業活動が苦しくなるという悪循環に陥ってしまうわけです。
関連記事:チャーンレート(解約率)とは?計算方法や改善方法を解説
40%ルールとは?
SaaSを提供している企業の中には、40%ルールを重視している会社も多く存在しています。
40%ルールとは「ARR(MRR)の成長率+営業利益率」が40%以上あるかどうかです。
SaaS型ビジネスモデルはユーザーが増えれば増えるほど雪だるま式に売上が増加していきますが、逆にユーザーの満足度が低く解約率が高くなったりすると途端に経営指標が悪化してしまいます。
40%を満たしていない企業はダメなのかというと決してそういうことではなく、あくまでの一つの指標として40%ルールというものが存在しています。
プライシングモデル例
SaaSにおけるプライシングモデル、つまり価格設定の事例も営業として知っておきたい内容です。
1.フリーミアム(Freemium)
サービスを無料で提供するプライシングモデルです。
無料プランでは制限があり、有料に切り替えることで全機能や特典を利用できます。無料で試して価値を感じ、必要に応じて有料へ移行する仕組みです。
2.定額プライシングモデル
月額、年額の課金サービスです。
毎月いくら払えばどのようなサービスが受けられるのかユーザ側にわかりやすく、サービスを受け入れやすいメリットがあります。
3.使用量プライシング
使った分だけ課金されるモデルです。
例えばクラウド上にあるサーバーのハードディスク容量など、定額型の場合「月に〇〇まで」と制限されているケースが多いです。
使用量プライシングは容量の上限を付けるのではなく、使った分だけ課金される内容となります。
4.階層型プライシング
実店舗で何かしらのサービスを受ける際に、「ここまでのサービスは不要だから値段を安くしてほしい」と思うこともあるでしょう。
階層型プライシングではユーザの必要な機能を分類し、価格プランをいくつか設定してサービスを提供します。
必要な機能だけを低コストで利用できるというメリットがありますが、サービスが複雑になりユーザを混乱させてしまう恐れもあるわけです。
SaaS営業に必要なスキル
SaaS営業は通常の商品やサービスとは異なる独自の特徴があり、それに合わせた営業スキルが求められます。ここでは、SaaS営業に求められるスキルについて紹介していきます。
関連記事:営業に必要な8つのスキルとスキルアップの方法とは?
コミュニケーション能力
SaaS営業は顧客との円滑なコミュニケーションが非常に重要です。適切な人は優れたコミュニケーション能力を持っている必要があります。製品の価値を明確に伝え、顧客の問題を理解し、ソリューションを提示することができなければなりません。 また、顧客との関係を維持し、発展させる能力も必要です。
技術理解力
SaaS製品は技術的な側面が強調されることが多いため、SaaS営業に適した人は技術に対する理解力が優れている必要があります。製品の機能と価値を理解し、顧客の技術的な要求を把握し、効果的な説明と解決策を提示することができなければなりません。
問題解決能力
SaaS営業では、顧客の問題を解決することが重要です。適切な人は問題を分析し、適切な方法で解決策を見つけることができなければなりません。顧客のニーズに合ったカスタマイズされたソリューションを提示し、顧客の満足度を高めることができなければなりません。
▶▶効果的な顧客関係管理の秘訣はSFA/CRM!詳細はこちら
SaaSビジネスモデルの営業組織におすすめのツール
売り切り型の商品やサービスではなく、SaaSプロダクトを販売するビジネスモデルの場合、マーケティングから営業、カスタマーサクセスに至るまで、見込み顧客や顧客のフォローアップは欠かせません。
そこで、マーケティング、営業、カスタマーサクセスまでを一元管理できるSFA/CRMツールの導入がオススメです。
なぜなら、案件などのデータ量が多くなっていくと、データの管理が煩雑になり、チームでの情報共有が困難になってくるからです。
SFAに関する記事はこちら:
Mazrica Salesを活用すれば、SaaS型プロダクトのマーケティングから営業、カスタマーサクセスに至るまで1つのツールでデータを管理・活用することが可能です。
Google WorkspaceやSlackなどのツールとも連携し、業務の効率化を推進していくことにも繋がります。
詳細は以下の資料内で紹介していますので、併せてご確認ください。
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終わりに
近年海外で急速に増えてきたSaaS型のビジネスモデルですが、日本国内でも今後拡大が予想されています。
今まで自社で扱っていた売り切り方のパッケージ商品が、突然サブスクリプション型のモデルへと変わるかもしれません。今回は、SaaS型サービスの営業と通常の営業の違いをご紹介しました。
SaaS型営業には何が求められていて、どのようなスキルが必要なのか改めて参考にしてみてください。
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