組織を効率的に動かすことは企業において重要なことです。

その役割を担うのが「マネジメント」です。

組織の目標を設定し、目標を達成するために業務だけでなく、お金や人といった経営資源を管理しなければなりません。

今回は、この「マネジメント」とはそもそも何なのか?といったことを考え、マネージャーの役割と仕事内容、必要なスキルについてご紹介します。

マネジメントとは?

マネジメントとは、企業が組織の成果を最大化するために、ヒト・モノ・カネといった経営資源を効率的に活用し、リスクを管理しながら、設定した目標やミッションの達成を目指すプロセスを指します。

ドラッカーによるマネジメントの定義

「マネジメント」という概念は、アメリカの経営学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカー(P.H.ドラッカー)が、1973年に刊行した著書『マネジメント』で提唱した言葉とされています。

ドラッカーは教育やコンサルティング活動を行う傍ら、ビジネスに役立つ経営や経済に関する多くの著作を執筆しました。

2005年に逝去した後は、「経済学の父」や「マネジメントの父」と称えられ、ビジネスパーソンなら一度はその名前を耳にしたことがあるでしょう。

さらに、近年ではドラッカーの「マネジメント」の概念を日常生活に取り入れるというコンセプトの書籍や映画などのメディアコンテンツも登場し、話題となりました。

彼は著書の中でマネジメント、マネージャーを以下のように定義しました。

  • マネジメント:組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関
  • マネージャー:組織の成果に責任を持つ者

マネジメント、という言葉はそもそも「管理」「経営」という意味を持つ単語で、組織において目標を設定し、その目標を達成するために、組織の限りある資源を効率的に活用することを指しています。

そして、その役割を果たす人物のことをマネージャーと呼びます。

組織に様々な手段を用いて働きかけながら、成果をあげていく役割を担います。

出典:P.F.ドラッカー(1999)「明日を支配するもの 21世紀のマネジメント革命」ダイヤモンド社

マネジメントが必要な理由

なぜ企業には「マネジメント」が必要なのでしょうか。

それは、「マネジメント」が企業の持続的な発展に不可欠だからです。企業は特に以下の点に注力すべきです。

組織が達成すべき目標を明確にし、その目標を実現するための効果的な組織運営を行うこと

組織の成長を促進するために、既存の人材が最大限に能力を発揮できる環境を提供し、これによって成果を最大化すること

従業員を成果を最大化できる人材へと育成することまた、企業や組織の目標は、社会全体に対して良い影響をもたらすものでなければなりません。

自社の業績向上だけを目指すのではなく、マネジメントを通じて「社会貢献」を果たすことが、組織に求められる責任であることを認識することが重要です。

マネジメントとリーダーシップの違い

マネジメントとリーダーシップは、どちらも組織の成果を上げさせるという意味で目指す方向は同じですが、異なる能力を指します。

マネジメントは、成果を上げさせるための手法を考え、権限や規則に基づいて組織を管理する能力のことであり、

リーダーシップは、組織の目標達成のためにメンバーを導いていく能力です。

マネージャーや部長職といったチームを管理する立場になると、リーダーシップ能力とマネジメント能力のどちらも求められます。

従って、マネージャーは人を含め、モノ、お金を効率よく動かして、目標に向けて最大限の成果を出す人となります。

一方リーダーは、チームの先頭に立って目標を示し、メンバーを先導する人になります。

リーダーシップについては、こちらの記事内で詳しく解説しています。
関連記事:リーダーシップとは?リーダーに必要な10のスキルと取るべき8つの行動

マネジメントの種類

マネジメントの種類

「マネジメント」と聞くと、「経営者やマネージャーに必要な業務」というイメージを持たれている方も多いかもしれません。

実際には、以下の3つのレイヤー(階層)でマネジメントを分類することが可能であり、それぞれ役割も異なります。

  • トップマネジメント
  • ミドルマネジメント
  • ローアーマネジメント

それぞれ詳しく紹介していきます。

▶️▶️営業マネージャーが必ず意識すべき3ステップとは?

トップマネジメント

「トップマネジメント」は組織の基本方針・運営方針などを決定し、経営計画や戦略を立てるなど、経営に関する意思決定と同時に最終的な責任を担う役割があります。

トップマネジメントとは組織の中の最高経営者陣、会長、社長、副社長、常務、専務など取締役会のメンバー、執行役員などが該当します。

ミドルマネジメント

「ミドルマネジメント」は日本で言う「中間管理者」に該当します。具体的には、部長・課長・係長・マネージャーなどの役割を担う人たちです。

ミドルマネジメントでは、経営陣の考えやビジョンを正しく理解し、部下に伝える必要があります。

部下の育成やマネジメント、経営陣と現場のメンバーとを繋ぐ役割も有し、組織内でも非常に重要な役割を担っていることが多いポジションです。

中間管理者はローアーマネジメント層を束ね、育てる役割も担います。

ローアーマネジメント

「ローアーマネジメント」はトップマネジメント、ミドルマネジメントに次ぐ位置にあるマネジメント層を指します。

主任やリーダーなどが該当します。

ローアーマネジメントは、現場のメンバーを束ね、指揮・管理する立場にあります。

現場の業務遂行をサポートし、トップやミドルマネジメントが策定した組織戦略や各種施策を現場レベルの活動へ反映させながら、会社のビジョン実現を目指す役割を担います。

マネージャーの役割と業務

マネジメントとは?事例で分かるマネージャーの仕事と役割 | Mazrica (旧 Senses)  Lab. | 2

前述したように、マネージャーの役割は自分の業務だけではなく、組織を管理することです。

ドラッカーは「組織への成果」と定義しているため、売上や原価などのお金の面の管理に注力しがちになります。

しかし、お金だけではなく組織メンバーのモチベーション含めて、組織の進むべき方向に必要な力、全てを管理して「成果」に繋げることが求められます。

成果をあげる上で、特に重要なことは部下の指導と育成です。

関連記事:営業のモチベーションを維持し向上させるには?リモートワークでのマネジメント例を紹介

ここでは、具体的にマネージャーとしての仕事内容を見ていきます。

環境作り

部下の育成は当たり前ですが、そのための意欲を引き出すモチベーション作りが大切です。

マネージャーは業務内容やインセンティブ、報酬、昇進などを通じて、部下のモチベーションを維持することが求められます。

このプロセスは、上司と部下、管理者と業務担当者との間で、双方向のコミュニケーションを通じて進められるべきです。

関連記事:嫌いな部下がいる時の考え方や行動とは?

目標設定

マネジメント次第で、部下の強みや特性を生かせることもあれば、逆に強みを引き出せずに有効に活用できないこともあります。

その後、決定した目標を達成するために必要な行動を計画します。

そして、その目標を従業員にしっかりと伝え、理解を促し、社内全体に浸透させることが不可欠です。

部下の指導・育成

任せた仕事に対して「なんで出来ていないんだ?」と叱咤することが指導とは言えません。

部下が成長するように業務の何が問題なのかを意識させる必要があります。

また、精神的なサポートも必要です。そのためにマネージャーは部下に仕事を任せっきりにするのではなく、業務内容を把握する必要があります。

フィードバック

部下と定期的に仕事内容や業務の進捗を確認し、改善ポイントをフィードバックするようにしましょう。

言いやすい組織風土を作ることで、部下とのコミュニケーションが密な組織が形成されます。

関連記事:正しいフィードバックのやり方とは?フィードバックの種類やメリット・デメリット

マネジメント人材に必要なスキル

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マネージャー、マネジメント人材は組織を管理する立場として多くのことが求められます。

先述したように、一担当者として遂行していた業務と、管理職としてマネージャーの業務では求められる質が異なります。マネージャーならではの壁にぶつかることも出てきます。

ドラッカーの「マネジメントに必要なスキル」を参考に4つのポイントでご紹介します。

マネージャーとしての評価が気になる方にはこちらの記事がオススメです。

関連記事:管理職に求められるスキル3つと高め方

意思決定スキル

人は何かを判断しなければならないとき、価値観や理念を軸に物事を考えます。

マネージャーの判断がぶれると部下への不信感を与えてしまいます。

また、マネージャー自身が自己ビジョンを強く持ち、それに基づいて意思決定をすることで組織を引っ張る力が増加します。

コミュニケーションスキル

当たり前ですがコミュニケーションは相手がいて初めて成立します。

発信する立場の人間は、受信する側の立場も理解しなければなりません。

受け手は理解してくれているか、そもそも受け入れられるのか、何を期待しているのか。

コミュニケーションの受け手が部下でも、取引先でも同様ですが、「受信する側」について理解してコミュニケーションを取ることが重要です。

関連記事:部下の褒め方のコツとは?|部下とのコミュニケーションの手法とポイント

管理スキル

管理能力といってもいきなり難しいことをするのではなく、実績に対する評価を行います。

組織が立てた目標に対して、現状を把握し軌道修正が必要なのかどうかを判断します。

「管理する」とは仕事を部下に与えて、あとは叱咤激励するのではなく、現状を把握し今後の軌道を修正することを指しています。

分析スキル

組織の課題解決や目標達成は、経験や勘だけでは達成できません。

データを分析し、それに基づいて戦略を立てなければ、的外れな施策を生み出し、組織を誤った方向へ導いてしまう可能性があります。

成果を最大化するためには、PDCAサイクルを回すことはもちろん、データを短期的に見るべきか長期的に見るべきか、分析の時間軸にも注意を払う必要があります。

関連記事:データ分析とは?目的やメリット・仮説思考を用いた分析手法を紹介

マネジメントスキルを高める方法

マネジメントスキルを高める方法としては、以下の4つを磨いていくと良いでしょう。

  1. 現状の分析力と問題解決力を高める
  2. プロジェクトマネジメント力を高める
  3. リーダーシップと意思決定力を高める
  4. コーチング力(コミュニケーションスキル)を高める

上記4つのスキルを磨いていくことで、結果的にマネジメント能力も上がっていくわけです。

4つのスキルを磨いていくための具体的な方法は、以下の記事内で詳しく紹介しています。

関連記事:マネジメント能力とは?必要なスキルと高め方を徹底解説

事例で分かるマネージャーの仕事

マネジメントとは?事例で分かるマネージャーの仕事と役割 | Mazrica (旧 Senses)  Lab. | 4

マネジメントは複数の要素が絡み合っているなかで、経営課題を解決に導かなくてはなりません。

人の資源はその中でも重要な割合を占めます。

人材におけるマネージャーの役割を事例で見ていきましょう。

Aさんは営業として、自分の企画提案力に自信があり、それを中心に既存顧客からのアップセルを中心に売上を組み立てたいと考えています。

しかし、会社側もビジネスがあり、Aさんのやりたいこと全てを受け入れることはできません。

受け入れた場合には、売上目標を達成するためのマイルストーンが現実的なものにならないケースがあります。

そのため、会社側の意向として、Aさんの業務を新規顧客の開拓に割り振ってしまうこともあるでしょう。

すると、Aさんのモチベーションは低下してしまうのです。

ここで、会社やマネージャーはどのように対処すればよかったのでしょうか。

その答えは、「お互いのメリットが重なり合う点にうまく調整する」ということになります。

「Aさんのやりたいこと(ここでは、既存顧客へのアップセル提案)」と「会社側がやらせたいこと(新規顧客の開拓)」が重なり合うポイントに業務を変更したり、削ったり、時には組織を再構成したりする必要があったのです。

マネジメントの事例を一つとっても、かなりの労力が必要になってきます。

関連記事:営業マネージャーの仕事と役割とは?事例でわかりやすく説明

終わりに|マネジメントスキルを高めて、営業組織を引っ張ろう

今回は、マネジメントとは何か、マネージャーが担う仕事と役割に関してご紹介しました。

組織を管理するマネージャーには、オペレーター時代とは異なる高いレベルのビジョンを持って部下を指導し、組織を引っ張っていかなければなりません。

ただし、組織を引っ張ることは簡単ではありません。

まずは今回ご紹介したようなマネジメントスキルを高めることからはじめてみてはいかがでしょうか。

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