ビジネスにおいて、リーダーシップは、部門や部署、プロジェクト単位など、幅広い場面で必要とされるものです。
働き方改革や生産性向上が進む中で、リーダーシップの重要性は今後さらに高まっていくでしょう。
そこで、本記事では具体的にリーダーシップの意味からリーダーシップ理論、優秀なリーダーがもつ要素などを解説します。
リーダーシップについて正しく理解したい人、リーダーシップを身につけたいと思っている人は是非ご活用ください。
リーダーシップとは?
リーダーシップ(leadership)とは、「統率力」のことで「組織を率いる能力」を意味します。
つまり、目標を設定して組織をその方向へ導く能力のことです。船の行き先を決めて、その方向へ船を動かす船長をイメージしてもらえれば分かりやすいと思います。
場合によっては上記とは別の意味で使われる可能性がありますが、本記事では「統率力」という意味のリーダーシップについて解説します。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントはどこが違うのでしょうか?
一見すると似たような意味の2つですが違いがあります。
2つの違いを理解しておかないと「リーダーシップを発揮しているつもりだったのに自分がやっていたことはマネジメントだった」という事態になりかねません。
そもそもマネジメントとは、組織のリソースやリスクを管理して組織を発展させる経営手法の一つです。
リーダーシップは組織を目標に向かって進める「攻め」の役割があります。対して、マネジメントは組織を管理する「守り」の役割があります。
組織の中でリーダーシップを担当する人のことを「リーダー」と呼ぶのに対して、組織の中でマネジメントを担当する人のことは「マネージャー」と呼びます。
具体的なマネージャーの仕事は以下となります。
- 部下に仕事を任せられる環境を作る
- リーダーが設定した目標が守られているか?という達成状況を管理する
- 部下に適切な指導を行う
リーダーについての役割は次の章で具体的に解説します。良きリーダーになりたい人は是非参考にしてください。
マネジメントについては、こちらの記事内で詳しく解説しています。
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リーダーシップ理論とは
組織やチームを成功へ導くには、どのようなリーダーが適しており、どのようなプロセスを経るべきかを探るのが「リーダーシップ理論」です。
ここでは、「PM理論」を含む代表的な4つのリーダーシップ理論について見ていきましょう。
PM理論
PM理論は、1966年に日本の社会学者である三隅二不二によって提唱された、リーダーシップ理論の一つです。
集団を発展させるリーダーシップの機能はどのように分類できるかを考察した理論です。
PM理論によると、リーダーシップは「課題関連機能(Performance function:P機能)」と「対人関連機能(Maintenance function:M機能)」の2つから構成されているとされています。
リーダーシップには2機能の組み合わせで4通りの機能があり、P機能にもM機能にも優れているリーダーシップが理想像と考えられています。
①PM型リーダーシップ
課題関連機能(P機能)も対人関連機能(M機能)ともに優れており、課題解決に力を入れながら、人間関係にも適切に対応できるタイプのリーダーシップです。
P機能の具体的な能力は、
- 目標を定めて計画を立てる能力
- スケジュールの進捗を徹底して管理する能力
- メンバーを指導し適切に指示を出す能力
- 組織の決まり事を守るためメンバーを徹底して指導する
など、成績・生産性を向上させるための能力が挙げられます。
M機能の具体的な能力には、
- 意見の対立やちょっとした軋轢が生まれたときに、すぐに気づいて調整役として関与する能力
- メンバーが自分の能力を最大限に引き出せるよう、声かけや指南まで幅広く対応する能力
- メンバー一人一人とコミュニケーションをとり、公平に対応する能力
などといった能力があります。
課題解決のみならず、メンバーを精神的に支える機能も持ち合わせているべきだといえます。
②Pm型リーダーシップ
こちらは、mが小文字になっており、目標を達成することに重点を置くけれど、メンバーの人間関係には気を配れないリーダーです。
M機能の能力を伸ばすためには、2つの人間関係の構図が重要な要素になります。
- 上司と組織メンバー…上司からの声掛けや、定期的な面談を行うなど、価値観を確認しあう機会を積極的に設ける
- 組織メンバー同士…自由に意見交換できるミーティングやプラットフォームを設置する
組織内でそれぞれの行動に責任を持たせたり、目標を意識する場を設けることで連帯意識を高めることも効果的です。
③pM型リーダーシップ
pMは、逆に目標達成よりも組織の人間関係の方に気を配るタイプの行動理論です。
目標達成の方が後回しにされてしまうために、企業にとっての戦力にはなりにくいタイプですが、組織の内部環境は整っているため、組織の成熟期を待てば、何らかの結果を生み出すこともあるかもしれません。
P機能を伸ばすためには、目指すべき目的地とそこに至る道順を明確にすることが重要です。ときには失敗を恐れない強い決断力が必要です。
④pm型リーダーシップ
pmは、課題関連機能も、対人関連機能もともに弱いタイプです。
組織が成長するために必要な機能についてどちらも消極的であり、こうしたリーダーシップを執る人がその位置に居続けることはできないでしょう。
このように、リーダーシップを執るべき人は、課題解決、目標達成に関する機能と人間関係を上手く管理する機能とをどちらも強く持ち合わせているべきだとされています。
特性理論
最も古典的なリーダーシップ理論であり、リーダーシップは「先天的な能力や特性」に基づくと考えられています。
特性理論では、リーダーには共通して持っている特性や資質が存在するとされています。
行動理論
リーダーシップは先天的な能力ではなく、「行動」によって発揮されるとする理論です。
優れたリーダーとそうでないリーダーの行動を比較し、成功するリーダーの行動パターンを類型化しようとしています。このため、リーダーを育成する理論として注目を集めました。
条件適合理論
リーダーの行動は、「メンバーの課題や状況に応じて変わる」とする理論です。
優れたリーダーは、特定の行動様式にとらわれるのではなく、状況に応じてリーダーシップスタイルを柔軟に使い分けるとされています。
リーダーシップスタイルとは
リーダーシップスタイルとは、リーダーがチームを導き、成功に導くために採用するアプローチのことです。
状況に応じてさまざまなスタイルを使い分けることで、効果的なリーダーシップを発揮できるとされています。ここでは、代表的なリーダーシップスタイルと、それぞれに必要な能力を紹介します。
ビジョン型
ビジョン型は、リーダーが描く目標やビジョンをチーム全体と共有し、メンバーのモチベーションを高めるスタイルです。新しいアイデアや変革を促進し、チームの結束を強化する効果があります。
しかし、目標が曖昧だったり、チームの目標が会社全体の方針とずれてしまうと問題が生じることがあります。
ビジョン型のスタイルでは、組織目標を会社の経営方針とリンクさせ、具体的な数値に基づいて目標を設定する能力が求められます。
コーチ型
コーチ型は、メンバーの個性や能力を見極め、成長をサポートするスタイルです。メンバーの自律性を促し、明確な期待を設定しながら能力向上を支援します。
コーチ型のリーダーはメンバーの主体性を重視し、モチベーションを引き出すことに長けています。
その結果、リーダーの予想を超える成果が生まれ、多様な考えを取り入れた柔軟な組織運営が可能になります。
コーチ型リーダーに必要な能力は、メンバーの力量を正しく評価するアセスメント力と、効果的なコミュニケーションスキルです。
親和型
親和型は、チームメンバーとの感情的なつながりを大切にし、信頼関係を築くことで成功へと導くスタイルです。
親和型のリーダーはチーム内のトラブルを防ぎ、無理な計画による失敗を避ける能力に優れています。
PM理論では、集団維持機能が高い「PM型」や「pM型」のリーダーが親和型に分類されます。
親和型リーダーは、組織内の信頼や友好関係を重視し、特に高いコミュニケーション能力が求められます。
ペースセッター型
リーダー自身が高いパフォーマンスを示し、組織全体を鼓舞するスタイルです。短期間で成果を出すために、リーダーが高い目標を設定し、自ら率先して行動します。
PM理論では、目標達成機能が高い「PM型」や「Pm型」のリーダーがこのタイプに該当し、短期間で集中的に成果を求められる場合に適しています。
このスタイルには、目標設定能力や、強い主体性と当事者意識が必要です。リーダーの率先した行動は、メンバーにも影響を与え、主体性を育てる効果があります。
変革型
リーダーが積極的に新しい挑戦に取り組み、チームの目標設定やモチベーション向上を図るスタイルです。
コーチ型に似た側面もありますが、変革型リーダーは個々の能力よりもチーム全体のパフォーマンスを重視する傾向があります。
組織全体の成果を最優先とするため、メンバー間の団結感を大切にする点が特徴です。
リーダーの役割
リーダーの役割は一体どんなものなのでしょうか?
リーダーには以下のような役割が求められます。管理職やチームのリーダーになった方は是非リーダーの役割を覚えておいてください。
目標を設定する
リーダーの最も重要な役割はまず「組織の目標を設定すること」になります。逆に言うと目標を設定しなければ、組織をどこにも率いることができません。
同じように目標や方向性が定まっていなければリーダーの下についている人達は「一体どこに向かって何をすればいいの?」と困惑してしまいます。
よって、目標を設定することはとても大切な要素です。
関連記事:目標管理の4つのコツ|部下のモチベーションを最大限引き出す
組織の環境を整備する
次のリーダーの役割は組織を整備することです。例えば、組織のメンバー同士の意思疎通が取れない状態ではうまく組織を目標まで率いることは難しいです。
私が以前勤めていた営業会社では他の営業パーソンの連絡先を自分で調べる必要がありました。
「あの営業パーソンに連絡を取りたい」と思っても連絡先を知らないためすぐに連絡が取れずに苦労した経験があります。
組織のメンバーが働きやすい環境を整備するのもリーダーの務めです。
関連記事:働き方改革とは?取り組み方や事例をどこよりもわかりやすく解説
メンバーが主体性を発揮できるよう働きかける
いくらリーダーが死に物狂いで手本になろうと働いても、メンバーのやる気がなければ出せる成果は限られてしまいます。
なのでリーダーシップにおいてはメンバーが主体的に動くように働きかける必要があります。
「どうやったら他の人を主体的にさせられるの?」と思ったかもしれません。
詳しくは次の章で解説します。
リーダーシップがある人に共通する要素
リーダーシップを持っている人には、共通する要素が存在します。
優れたリーダーになるためには、以下で解説する要素を体得できるよう、努力を続けることが大切です。
①目標設定能力
上でもお伝えした通りリーダーシップは目標を設定することが求められます。
ただ目標を設定するだけではなく、 実現可能な目標を設定する必要があります。
実現可能な目標を設定するために必要な「KPI」について、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:KPIとは?営業のKPI設定方法とKGIとの違いを簡単に解説
②学習能力
リーダーシップを発揮するためには、さまざまな知識を身につける必要があるため、学習能力が求められます。
また、常に先へ先へとチームを引っ張っていかなければならないので、旧習にとらわれず、新しいやり方はないか、もっと最適な方法はないのかなど、学び続ける姿勢を持ちましょう。
③情報収集能力・適応力
チームを率いる立場であるリーダーには、常に社会や業界の動向についての最新・最適な情報にリーチできる能力が必要です。
世の中にあふれる膨大な情報の中から、正しい情報を取捨選択して収集する能力に長けていれば、トレンドを逃さないフレッシュな組織戦略を施行することができます。
また、収集した最新情報に沿って、時代変化に速やかに適応できる能力も重要です。
これまでにもリモート化などの働き方改革の波にいち早く対応できた企業が業績を伸ばしてきたように、従来のやり方に固執せず、変化に柔軟に対応する適応力が欠かせません。
関連記事:営業リーダーのためのデータマネジメント|必要なツールや機能を紹介
③判断力
当然のことながら、リーダーには判断能力が求められます。
優柔不断な態度をとる人に、ついていきたいと思う人は少ないでしょう。
時には正解かどうかにかかわらず決断をし、周りを引っ張ることが必要です。
④コミュニケーション能力
リーダーシップは必ず自分以外の人が関わります。
そのため自分以外の人を動かすためのコミュニケーション能力が必要となります。
「人の話をよく聞く」のはもちろんのこと、「さりげなく気を遣う」などして、様子のおかしい人はいないか、困っている人がいないか常によく気を配りましょう。
特にメンバーを主体的にするために、メンバーの満足感や充実感を向上させる必要があります。
コミュニケーションを含めて、信頼される上司になるポイントはこちらの記事内で詳しく解説しています。
関連記事:信頼される上司になる3つのポイント|部下が冷たいのはどうして?
⑤育成能力
リーダーにはメンバーを育成する力が求められます。
先ほどもお伝えしたようにリーダーがいくら有能でもひとりでできることには限界があります。
そのため、リーダーシップを発揮しようと思ったら、メンバーを育成する力が求められます。
関連記事:新人営業を即戦力にするための育成方法5つ|身につけさせるべきスキルとSFAを活用した教育術を紹介
⑥誠実性・責任感
当然のことながら誠実な人でなければ優れたリーダーにはなれません。
なぜかと言うと約束を破るようなリーダーでは「あの人は口先だけで不誠実」という印象を与えてメンバーが言うことを聞いてくれなくなるからです。
また、リーダーになった方は率いるメンバーの責任も取る必要があります。
よく中間管理職は大変と言われますが、「自分のメンバーの責任まで取る」という意識を持ちましょう。
⑧業務実行力
前述した通りリーダーはメンバーのお手本になる必要があります。
そのためリーダーが優れた業務実行力を備えていなければなりません。
「仕事ができない上司」と「仕事ができる上司」がいたら、どちらの指示を聞こうと思うかは明確ですよね。
リーダーシップに求められる要素の比重としては、「熟考する」よりも「行動する」ことのほうが大きいです。
誰よりも先に行動に移し、自分で実践する姿をメンバーに見せることで、「あの人がやるならできるのだろう」という信頼感を育てることが重要です。
⑨モチベーション管理能力
リーダーシップでは自分のモチベーションだけでなくメンバーのモチベーションも管理する必要があります。
組織として仕事をする以上、メンバーのモチベーションが低ければ全体としての効率が下がってしまうため、モチベーションの低下を防ぐことが重要だと言えます。
マネジメントの視点では全員を同じ基準で評価することが求められますが、リーダーシップの視点では、一人一人と向き合い、個々に期待していることを伝え、メンバーをモチベートできるようにしましょう。
リモートワークでも部下のモチベーションを維持する方法をこちらの記事で解説しています。
関連記事:営業のモチベーションを維持し向上させるには?リモートワークでのマネジメント例を紹介
⑩寛容性
リーダーは方向性を示しますが、メンバーからは「これは違うと思う」 という意見も出てきます。そのため、自分とは違った意見を受け入れるだけの寛容性が求められます。
寛容性の高いリーダーのもとでは、新しい発想も生まれやすく、部下のモチベーションも向上し、活性化した組織運営を行うことができます。
リーダーリップ能力を育てる方法
次に、リーダーシップ能力を育てる方法について解説します。
日常的に意思決定を行う
判断力や業務実行力を身につけ、向上させるためには、日常生活や業務において意識的に意思決定を繰り返すことが効果的です。
たとえ小さなタスクであっても、どの方法が適切かを考え、最良のアイデアを選び、即座に行動することを心がけましょう。
これまで慣れた方法に頼りがちな人や、複数の選択肢から決断するのが苦手な人にとっては時間がかかるかもしれませんが、このプロセスをしっかりと実践することで、リーダーシップ能力を高められます。
仕事以外の人間関係を充実させる
リーダーシップに不可欠なコミュニケーション能力を向上させるには、仕事以外の人間関係を広げることも重要です。
同じ職場の同僚や業界の仲間とは、共通の話題が多いため、コミュニケーションがパターン化しやすくなります。
限られたコミュニティだけに閉じこもっていると、異なる立場の人とのコミュニケーションが苦手になることもあります。
視野を広げるためには、仕事以外で新しい趣味を持ったり、習い事を始めたりして、多様な人と関わりを持つことが効果的です。
また、異業種や幅広い年齢層の人が集まる社外研修に参加するのも有効な手段です。
チームメンバーを信頼することの重要性
メンバーから信頼を得るには、まず自分がメンバーを信頼することが大切です。
チームの方向性が一致していることを確認するのは重要ですが、過度に指示したり頻繁に進捗を尋ねたりすると、メンバーは「任せてもらえていない」「信頼されていない」と感じるかもしれません。
必要最小限の指示や確認で業務を任せることで、信頼のメッセージが伝わり、信頼関係が生まれます。
コミュニケーションスキルを習得する
周囲と信頼関係を築くには、傾聴などのコミュニケーションスキルが役立ちます。
傾聴とは、相手の声に真剣に耳を傾け、考えや思いを受け入れることです。
単に話を聞くだけでなく、相手の価値観を尊重する姿勢が求められます。
業務上の相談や報告を受けるときに傾聴を実践することで、相手は「理解されている」「共感してもらえて安心できる」と感じ、信頼が深まります。
リーダーは、自分のビジョンや期待を明確に伝えるだけでなく、メンバーの意見や感情に耳を傾け、共感することも心がけましょう。
定期的な会議や1対1の対話を通じて、チームとの信頼関係を築き、全員が目指す目標を共有すると効果的です。
終わりに
リーダーシップについてお伝えしてきましたがいかがでしたか?
リーダーシップという言葉はビジネスの場面ではよく使われます。
しかし、定義を明確に考えていないまま使っている人も多いと思います。
あなたがリーダーシップを発揮する必要があるときは、リーダーシップの定義や要素を思い出して組織を目標達成に向かって導いてあげてください。
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