MA(マーケティングオートメーション)ツールには、データ分析機能が搭載されており、多様な切り口からマーケティング施策の効果を測定できます。
どのようなデータを分析できるかを理解しておけば、実際の業務に活用しやすくなるでしょう。
ただし、施策の効果を正しく測定するには、目的に応じた手法を用いて分析を正確に行うことが重要です。
そこで本記事では、MAツールで分析できる5つの代表的なデータと分析の注意点を解説します。
分析効果を高めるポイントや代表的な4つのフレームワークもご紹介しますので、MAツールを使ったデータ分析にお役立てください。
この記事の内容
MAツールで分析できること
MAツールで分析できる代表的なデータは以下の5種類です。
- Webサイトを訪れた人の行動履歴
- メールの開封率やクリック率
- さまざまな属性データ
- 購買パターンや優良顧客
- Webサイトを訪れた企業
各データを基に、具体的にどのような内容を分析できるのかを解説します。
関連記事:【2025最新】MAツールとは?できることや活用事例、製品紹介まで徹底解説!
Webサイトを訪れた人の行動履歴
MAツールはWebサイトを訪れた人の行動履歴を詳細に分析でき、Webサイトへの流入経路を把握することができます。
例えば、SNSや特定の広告キャンペーンページからの訪問者数を追跡可能です。滞在時間も記録されるため、特定のページでの滞在時間やコンバージョン率の変化も測定できます。
このように、訪問ユーザーの行動履歴の分析結果からは、顧客の興味関心、購買意欲の高さを確認できるため、Webマーケティングにおけるターゲット設定、コンテンツ戦略の最適化に役立てられます。
メールの開封率やクリック率
MAツールでは、メールの開封や商品ページへのリンクのクリックといった顧客のアクションの詳細も分析可能です。
具体的には、MAツールのメール配信機能を使って送信したメールの開封率やクリック率をモニタリングできます。これらのデータを分析することで、どのメールの件名が受信者にとって魅力的だったのか、受信者が興味関心を持ったコンテンツはどのような内容だったのかを調べられます。
これらの結果から、個別の顧客が関心を寄せている分野を理解すれば、将来的なコミュニケーションに役立てられる情報を収集できるでしょう。
さまざまな属性データ
MAツールには、顧客の年齢や性別、アクセスしている位置、購買履歴、興味関心といった顧客の属性データを収集・分析できる機能が備わっています。
属性データごとにセグメントした分析結果を利用すれば、ターゲット市場を精緻に設定したうえで、特定のセグメントに向けてカスタマイズされた最適なマーケティングキャンペーンを展開できるようになります。
また、顧客の属性データを基にして、より魅力的なコンテンツの提供やプロモーション施策の展開など、顧客一人ひとりのニーズに合ったアプローチを実現可能です。
購買パターンや優良顧客
MAツールに登録された購買履歴やアポイント数などのデータを分析すれば、顧客の行動履歴を具体的に把握でき、購買パターンや優良顧客の特定に役立てられます。
例えば、特定の製品やサービスに興味や関心を寄せている顧客を見つけ出して、分析結果に基づいて最適化されたプロモーションを展開することが可能です。
購入履歴の分析を通じて顧客のニーズや課題が明確になれば、クロスセルやアップセルの提案に最適な機会を特定できるでしょう。また、アポイント数の分析は営業活動の効果の評価やリードの進捗状況の追跡に寄与します。
Webサイトを訪れた企業
MAツールには、Webサイトを訪問した企業を特定する機能もあります。グローバルIPを基に企業を識別できるからです。
インターネットでサイトを閲覧したりメールを送信したりする場合は、グローバルIPアドレスが用いられます。グローバルIPアドレスは重複することがないため、訪問ユーザーのグローバルIPアドレスが特定の企業のものであれば、アクセス元の企業を特定可能です。そして、そのユーザーが訪問したページや興味を持っているコンテンツを追跡できます。
このように行動履歴を分析すれば、企業としての興味関心やニーズを把握できるため、ターゲティングの最適化やフォローアップ基盤の構築に役立てられます。
例えば、ある企業のIPアドレスを通じて特定の製品ページを何度も訪れている場合、その企業は製品に関心を寄せている可能性が高いでしょう。データ分析により、購買意欲の高い見込み客を選別し、適切なアプローチを行うことで営業チームのリードの変換率を向上できます。
MAツールによる分析の注意点
MAツールで分析を行う際は、以下の3点に注意しましょう。
- 複雑なセグメンテーションにしない
- 分析する指標を増やしすぎない
- 初めから複雑な内容にしない
複雑なセグメンテーションにしない
MAを使ってマーケティング施策の効果を高めるには、顧客に対して個別に最適化された施策を実施する必要があります。そのためには、細かく正確にセグメントしなければなりません。
ただし、セグメントが細かい程、成果が高まるわけではない点に留意が必要です。条件が複雑になりすぎると登録されているデータ数に対する見込み顧客の数が少なくなり、施策の効果測定の正確さが担保されなくなるからです。
自社が抱える見込み客の数が多い場合は問題ありませんが、見込み客数が不十分な場合は、まず見込み客を獲得し、母数を増やすことを優先するのが賢明です。見込み客が十分に集まらない間は成果を評価しやすいシンプルな施策を実行しながらリードジェネレーションも実施すると良いでしょう。
セグメンテーションについて、詳しくは次の記事を参考にしてください。
分析する指標を増やしすぎない
MAツールを活用すれば、SNSやWebサイトなど幅広いチャネルにまたがるマーケティング活動を一元管理して、取得したデータからさまざまな分析を行えます。しかし、すべてを分析しようとするのは現実的ではありません。
長期的な運用を考えているのであれば、MAツールの利用になれないうちは、指標を最小限に絞り込むことが重要です。MAツールの利用目的を具体化し、目的達成のために確認すべき指標を事前に検討しておくことで、データ分析とその後の改善をスムーズに行えるようになります。
初めから複雑な内容にしない
MAツールでは、顧客の属性や行動履歴を基にセグメントして、最適なアプローチに役立てられます。セグメントのポイントは、最初はシンプルなシナリオからスタートし、徐々に複雑にしていくことを意識したシナリオ作成を意識することです。
シナリオが複雑で分岐の数が多くなると、分析にかかる時間や手間が増えるだけでなく分析の難易度も上がります。この状態では、どの要素が効果的だったかといった仮説を立てるのが難しくなるでしょう。まずは、シンプルなシナリオ設計から始め、分析と改善を継続してください。
MAツールの分析効果を高めるポイント
MAツールの分析効果を高めるには、以下のポイントを意識しましょう。
- 導入目的を明確にする
- 目標を数値化する
- 課題を解決できるMAツールを選ぶ
- ほかのツールと連携する
- 分析を継続する
導入目的を明確にする
MAツールを使いこなすには、自社がマーケティング活動において抱えている課題を確認し、導入目的を明確にする必要があります。MAツールを導入すること自体は目的ではなく、課題解決などの目的を解決する手段だからです。
例えば、「リード獲得」や「効果的なナーチャリングを行うための自動化」を目指すことが目的としてあげられます。
また、「ターゲット顧客の特定」や「パーソナライズされたコンテンツ提供を通じた、リード獲得率の向上」なども目標に設定できます。具体的な目標を設定すれば、目標達成のためにどのようなアクションが必要なのかが明確になるため、MAツールを選定しやすくなるでしょう。
目標を数値化する
MAツールを運用するには、成果目標として具体的な目標を数値化し、マーケティング施策の成果を分析して改善を実行するPDCAサイクルを回すことが欠かせません。
成果を数値化するのは、目に見えない成果は客観的な評価が難しく、人によって評価が異なることがあるからです。成果の数値化は、成功した施策に再現性を持たせることにも役立ちます。
課題を解決できるMAツールを選ぶ
MAツールの効果を最大化させるには、自社のニーズに見合ったMAツールを選ぶ必要があります。ただし、自社のニーズは時間とともに変化する可能性があるため、変化に応じて機能を追加できる柔軟な対応を行える製品が理想的です。
なお、自社に適したMAツールかどうかを判断するには、いくつかのツールを選定したうえで、トライアルやデモなどを利用して操作性や機能性、カスタマイズ性、サポートの内容などを確認すると良いでしょう。
また、他社のMAツールの導入事例を参考にすれば、自社での活用方法のヒントを得られます。MAツールの選び方は次の記事も参考にしてください。
関連記事:MA(マーケティングオートメーション)ツールの選び方5選!自社に合うMAとは?
ほかのツールと連携する
MAツールはSFA(営業支援ツール)やCRM(顧客関係管理システム)などのほかのツールと連携することで、より効果を発揮します。情報の一元化により、営業やカスタマーサクセスなどの部門とも顧客情報を共有できるからです。
システムを連携させるメリットには、顧客やマーケティングデータの一元管理が可能になり、効果的な分析や戦略策定が行える点です。また、精度の高い分析により有望な見込み客を営業チームに受け渡せるため、クロージング率の向上が期待できます。
MA・SFA・CRMの違いは次の記事を参考にしてください。
関連記事:MA・SFA・CRMの違いとは?特徴・活用方法・連携メリットを徹底解説
分析を継続する
MAツールは、一度分析すれば良いのではなく、運用する限り、継続的に分析を行うことが大切です。
Webサイトの分析を行う際は、訪問者数やページごとの閲覧回数、滞在時間などを総合的に分析して、Webサイト全体のパフォーマンスを改善する必要があります
MAの分析機能の大半は見込み客とその行動の把握ですが、Webサイトの構成やコンテンツの良し悪しまではわかりません。Webサイトの改善後に訪問頻度の高い見込み客や特定ページでの滞在時間が長い顧客に適したアプローチを行うことで、優秀な見込み顧客を効率的に集められるでしょう。
MAツールの分析に用いられる主なフレームワーク
ここからは、MAツールの分析で用いられることの多い代表的なフレームワークを4つご紹介します。
- STP分析
- セグメンテーション分析
- デシル分析
- RFM分析
それぞれのフレームワークで可能な分析の内容や手順を理解して、マーケティングに活かしましょう。
STP分析
STP分析は、顧客分析の手法の一つで、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字から名づけられました。
STP分析は以下の手順で進めます。
- STP分析を行う目的の明確化
- 市場の細分化(セグメンテーション)
- 自社に適した市場を決定する(ターゲティング)
- 市場における自社のポジションを明確にする
- マーケティング戦略を立案する
STP分析は、市場における立ち位置を決定することで効率良く売上を向上させるためのマーケティング施策の立案・実施に役立ちます。主に新規事業の展開に活用可能です。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析は、市場や顧客を属性やニーズによりグルーピングし、各セグメントに応じたマーケティング戦略を展開する手法です。
一般的なセグメンテーション分析では、顧客を以下の4項目に分類します。
- ジオグラフィック変数(地理的変数):居住エリア、周囲の環境、人口、市区町村などの地理的条件、文化、宗教
- デモグラフィック変数(人口動態変数):年齢、性別、職業、所得、学歴、家族構成
- サイコグラフィック変数(心理的変数):趣味、嗜好、価値観、購買動機
- ビヘイビアル変数(行動変数):購買状況、ロイヤルティ、ベネフィット、製品などの利用頻度
市場を細分化して顧客をセグメントすることで、自社がどのような領域で優位性を保てるかを見極められます。セグメンテーション分析を行えば有効なターゲットを選定できるため、パーソナライズされたプロモーションを実施してマーケティング効果を高められるでしょう。
デシル分析
デシル分析は、MAツールを活用してデータセットの要素を10等分し、各デシル(10分の1単位)を分析する手法です。
- 購買金額の高い順に顧客を並び替える
- 顧客を10等分にグルーピングする
- 各グループの合計購入金額を計算する
- 各グループの購入金額比率、累計購入金額比率、顧客1人あたりの平均購入金額を計算する
デシル分析を行うことで、顧客の特性や行動パターンを把握できます。リピーターの可能性の高い顧客や付加価値の高いグループを特定するのに有用な手法です。
RFM分析
RFM分析は、Recency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)の3つの指標で顧客をグルーピングする手法です。
RFM分析は以下の手順で進めます。
- 顧客の最終購入日・購入頻度・購買金額のデータを集計・整理する
- 各指標の分布情報を確認して分析を行う
- 分析結果にもとづいて最適な施策を実施する
RFM分析では、購買頻度の高いリピーターや高額購入者を特定できます。分析結果を基に顧客分類に応じたマーケティング施策を実施すれば、顧客満足度の向上に役立ち、LTVの向上が見込めるでしょう。
まとめ
MAツールの分析機能を活用すれば、Webサイト訪問者の行動履歴や属性分析、メールマーケティングにおける開封率やクリック率の確認、顧客の購買パターンや優良顧客の特定が可能です。
分析を実施する際は、どのような成果を得たいのかといった目的を明確にすることが大切です。また、分析は定期的に行い、マーケティング施策の成果を継続的に確認・改善していきましょう。
代表的な分析のフレームワークには、STP分析、セグメンテーション分析、デシル分析、RFM分析があります。MAツールに搭載されるこれらの分析機能を利用すれば、効果的なマーケティング施策の実施に役立てられます。ぜひ、本記事を参考に、MAツールの分析機能を活用してみてください。