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BtoBビジネスで注目されている「セールスイネーブルメント」という概念をご存知ですか?
「現在の営業力を改善したい」「営業組織を強化したい」「営業施策を継続的に行っていきたい」と考えている企業にとっては、高い効果を得られる期待ができるものです!
今回は、セールスイネーブルメントの概念の説明と、社内にどのように導入すればいいのかについて解説します。
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この記事の内容
セールスイネーブルメントとは?
現在、あなたの会社では営業活動に関わる要素を、社内でどのように組み立てていますか?
研修や教育はHR(人事部門)、営業プロセスの管理や営業戦術の決定は営業部門、ツール設計や開発はシステム部門など、それぞれの仕組みを部門で分けて取り組んでいることが多いと思います。しかし、“売上を最大化する”という目的に立ち返ったとき、果たしてこの方法は成果に結びつくのでしょうか?
各種施策を部門によって分断せずに一貫して設計・測定(全体設計)することで、より高い効果が見込めると思いませんか?そうした考えのもと生まれたのが、「セールスイネーブルメント(Sales Enablement)」という概念です。
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セールスイネーブルメントは、人事採用や新人研修、顧客流入経路、コーチングなど各部門で行われる施策が売上に対してどれぐらい影響を与えているかという視点で施策を管理していく考え方です。そのためには、それぞれの施策が売上に対してあげる成果を測定可能な(数値化できる)状態にし、その数値を基に売上に対する成果を上げていくことが大切になってきます。
営業活動(Sales)の領域でテクノロジーを活用することを「Sales Tech」と言い、欧米を中心に市場が確立されています。身近な例では、CRMやSFA。顧客管理や営業活動の効率化に役立つツールとして多くの企業で取り入れられていますね。ITR社の調べによりますと、セールスイネーブルメント市場は近年大幅な伸びを見せており、2017年度の売上金額は14億円で前年度比6.1%増という結果になりました。さらに2018年度には10.7%増の成長が見込まれており、今後も高い成長率が見込まれています。さらに、注目を集め始めた同市場には今後も新規企業の参入があると見られています。
各部門におけるセールスイネーブルメントの具体的取り組み
セールスイネーブルメントは、海外だけでなく日本でも広がりを見せています。具体的にはどのような取り組みが行われているのでしょう。代表的なものについて見ていきましょう。
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●営業教育におけるセールスイネーブルメント
中小企業庁の調査結果によると、企業が実施している主な人材育成方法は「従業員間の自主的な取り組み」や「資格取得支援」の割合が高くなっています。これはつまるところ従業員に任せっきりということですね。しかしそれでは、従業員の成長をモチベーションや確保できる時間など個人に委ねることになってしまいます。この場合、従業員の成長にばらつきが出てしまい、会社全体の売上を向上させるという観点から見ると望ましくありません。また、一般的な日系企業の営業職では、採用担当が新入社員研修や役職別の研修を提供し、営業部門のOJT研修は営業現場任せ、外部研修はコンサルティング会社というケースが多くなっています。
つまり、営業強化のための教育が部門によって分断されているのです。会社が発展していくためには新たな人材の採用が必要不可欠ですが、このようなバラバラな教育体制では、個々の営業担当者のスキルアップや売上の強化に繋がりにくくなってしまいます。特に現場任せのOJT研修は指導を担当する営業のスキルに研修のクオリティが大きく左右され、営業知識に偏りが出たり、営業についての間違った認識をもってしまうことが懸念されます。
そこに、セールスイネーブルメントの「全体計画」や「数値測定」という考え方を用いるとどうなるでしょうか。結論から言いますと、研修内容を根拠をもって定めることができるようになります。順を追って見ていきましょう。
まず、営業教育において「全体計画」を実施するには、営業部の人材に必要な素質を明確に定義する必要があります。これは営業成績上位(下位)の営業にアンケートや面談を実施することで得られるでしょう。そして、そこで多くの営業が必要と指摘していた素質を身につけられるような研修を行っていくことが大切です。
そして、その成果を「数値測定」、つまり実施した研修のうちどれが役立ちどれが役に立たなかったのかを追跡していくことが大切になってきます。研修を終え現場に出た営業にどの研修が役立ち、またどんな研修があったらよかったか聞いていきましょう。その時、行った研修を全てリストアップしそれぞれの満足度を数値化してもらうとなお良いでしょう。そこで満足度が高かったものは次年度も実施し、満足度が低かったものについては希望のあった研修に据え変えていくと毎年研修のクオリティを上げていけます。
一般的な新人研修では「日報」や「社会人のマナー講座」といった項目が含まれることが多いですが、それは真に営業が必要としている研修なのか検証しましょう。もしかすると、営業が研修で知りたかった情報は、自分で調べると骨の折れる競合製品情報であったり、顧客のHPのチェックポイントであったりするかも知れません。もし、そうとわかったならば採用担当でお金と時間をかけてそういった資料を作ることが営業成績に直結する研修を提供することにつながるのではないでしょうか。
このサイクルを繰り返していくことで営業教育と営業現場をつなげ、営業現場で実際に必要になるトレーニングやコンテンツを継続的に提供することができるのです。
●マーケティングにおけるセールスイネーブルメントの視点
マーケティング部門におけるセールスイネーブルメントの例として、「流入経路(チャネル)」にフォーカスしたものをみていきましょう。
営業が売上をあげやすくするためにマーケティング部門ができることとしては、良質なリードを提供することにつきます。良質なリードとは受注につながる確率の高いリードです。そのため、流入経路にセールスイネーブルメントの考え方を照らしあわせて見ると、どのチャネルが受注にいたるのか測定し、受注に至らないチャネルを改善し、受注に至るチャネルを強化するという全体設計が必要になってくるのです。下の図はある会社のチャネル別受注率を示したものです。縦軸は案件維持率、横軸は営業フローとなっています。
(営業支援ツールSensesの分析レポートから引用 ▶︎▶︎分析レポートの機能について詳しく見る)
これから各チャネルの受注率との関係がわかります。
・概要資料→受注しているが商談から受注のフェーズ進捗が良くない→失注要因から顧客の懸念要素を分析し、概要資料内で払拭できるようにする
・営業代理店→商談化するが受注に至らない→代理店に営業コンテンツや成功事例を共有することで受注を目指す
・自社ウェビナー→受注に至るが商談化率が低い→ウェビナー受講後早めにアポ取りの電話を入れる/ウェビナーの内容と聞きたかった内容に齟齬がないか調べる
・展示会→受注に全く結びつかない→注力しない
この場合、「展示会」に割くリソースを減らし、「概要資料」と「自社ウェビナー」からの集客をあげることに注力するという施策を取るのがもっともセールスイネーブルメントにつながるでしょう。
このように各チャネルから獲得できたリードの数だけではなく、営業プロセスにおけるチャネルの貢献度を調べていくことで、最終的な売り上げに結びつくチャネル設計をしていくことができます。
●採用におけるセールスイネーブルメントの視点
採用に関してもセールスイネーブルメントの観点を導入することで、営業に与える成果を最大化していくことができます。営業教育におけるセールスイネーブルメント同様、採用においてもまず、自社営業として活躍するために必要な性格や能力を明確にする必要があります。これも研修同様、社内の売上上位層に共通する要素をアンケートや他者評価、面談によってあぶりだしていくことが必要でしょう。そして、その能力を測ることができる選考方法を考え、採用活動を行っていきます。その後、採用された社員が活動しているかを継続的に追っていくことで、自社に適した営業像を作ることができます。
1つ例を見てみましょう。BtoBでCRMツールを販売しているHubspot社で行われたセールスイネーブルメントの例です。この会社では、社内調査の結果「コーチング応用力」「事前準備」「好奇心」といった能力が「クロージング力」「ロジカルシンキング」といった能力よりも重要だということが明らかになりました。Hubspot社では顧客に興味を持って、顧客をよく調べ、上司からのフィードバックを素直に聞ける社員ほど成果を残すということでしょうか。そのため、Hubspot社では面接において、「コーチング応用力」を測るための模擬商談を実施しています。まず1回目の商談では、故意に把握しきれないほどの複雑な顧客情報を与え、その中でも顧客に興味を持って商談できるかを見ていきます。そして、1回目の商談について多くのフィードバックをしたのち、時間を開けずに二度目の商談を行い、フィードバックを活かした商談ができているか見ていくのです。その際には、採用部門に営業経験の豊富な社員を配置するとこういった選考もスムーズに進めていくことができます。
そして、採用した営業担当が入社後、実際に売り上げに貢献しているかを追跡していくことで、選考項目の精度を上げていくことができます。
このように、採用にもセールスイネーブルメントの基本的な考えである「全体設計」「数値測定」という観点を活かすことができます。
セールスイネーブルメントを導入するための事前準備
先述の通り、セールスイネーブルメントには「全体設計」と「測定可能」という2つの特徴があります。この2つの要素は同時に達成できるものではなく、測定可能になってはじめて、全体設計が可能になるという順序があります。
では一体、営業活動が「測定可能」とはどういった状況を指すのでしょうか。営業活動の目的である売上を構成するのは個々の「案件」であることを考えると、案件について次の2点を満たすことが必要でしょう。
●案件情報を管理する「単位」が決まっている
フェーズ管理であるならばテレアポ/商談/受注/失注など、失注要因管理であるならば、時期違い/機能不足/金額など案件情報を登録する上で必要な単位が設定されていなければ測定することはできません。
●案件情報が管理されている
案件にまつわる情報として以下のものが管理されていれば、過不足なく全体設計をしていけるででしょう。
▶︎▶︎営業で管理すべき4つのデータ|営業の成果を向上させる方法
しかし、顧客や案件にまつわる情報は案件数や顧客数の増加にともなって爆発的に増えていくためSFA(営業支援ツール)などの案件管理ツールを導入してしまうのが手っ取り早いのではないでしょうか。
実際にSFAを導入すると案件管理の他にどんなメリットがあるのでしょうか?
SFAによる営業情報の蓄積
セールスイネーブルメントのポイントは「数値化・計測」という点。
つまり、感覚的な部分ではなく、きちんとデータで裏付けされた情報を基にして、成果を分析していきます。
営業活動を数値化して管理するためには、SFAを用いて情報を蓄積していくことをおすすめします。SFAでは次のような数値情報を蓄積することができます。▶︎▶︎営業支援ツールSensesについて詳しくみる
・売上実績や予測
・受注率
・営業案件の進捗率
(以下はクラウド営業支援ツールSensesのファネル分析レポートのイメージになります。)
これらの指標は営業活動の成果を定量的に把握することに役立ちます。
また、
・顧客情報
・営業アクションの履歴
・商談履歴
・社内コミュニケーションの履歴
(以下はクラウド営業支援ツールSensesの営業アクションのイメージになります。)
他にも様々な活用方法がございます。
などの情報も一元管理することができるので、具体的な営業施策を打ちだすのに役立ちます。
更に
・トレーニング履歴
・フィールドコーチング履歴
・活用したコンテンツの履歴
なども記録しておくことで、人材開発支援を活用した情報も蓄積することができます。
セールスイネーブルメントを運用する
SFAに蓄積された多くの情報で、セールスイネーブルメントがどのくらい営業実績に結び付いたのかを分析することができます。
営業達成度(売上目標・実績、または前年対比など)は、営業施策がどれだけの成果に結びついたのかを具体的に把握する指標となります。
そして、トレーニング履歴やコンテンツの活用履歴は、人材開発施策をどの程度活用されたのかを把握する指標になります。この二つのデータを掛け合わせてプロット図を作ると、どの営業担当者にどのようなトレーニングを施すべきなのかが見えてきます。
この検証・分析を経て、次に提供すべきトレーニングやコンテンツの開発を行い、再度数値を検証することで、体系的・継続的にセールスイネーブルメントを行っていくことができるのです。つまり、セールスイネーブルメントを継続して行い、自社の営業力を更に強化していくためには、PDCAサイクルを回していくことが最も大事です。
▶︎▶︎今すぐ実践できるPDCAサイクルの効率的な回し方とコツ
終わりに
営業施策をトータルで設計・管理するセールスイネーブルメント。
自社内にセールスイネーブルメント部門という、営業・人材どちらにも特化した部門を配置することで、自社の営業力にテコ入れが期待できますね。
実際にセールスイネーブルメントを導入する場合は、情報の蓄積や数値化を基にした検証が必要となってきます。
SFAなどのツールを活用して、自社内の情報を見える化し、セールスイネーブルメントに活用していきましょう!

セールスイネーブルメント -経営層・営業マネージャーが取り組むべき営業改革-
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